セレニカR錠200mg/ セレニカR錠400mg


作成又は改訂年月

** 2014年8月改訂 (第16版)D17

* 2014年1月改訂

日本標準商品分類番号

871139
871179

日本標準商品分類番号等

効能又は効果追加承認年月(最新)
2011年6月

片頭痛発作の発症抑制

薬効分類名

抗てんかん剤
躁状態治療剤
片頭痛治療剤

承認等

販売名
セレニカR錠200mg

販売名コード

1139004G2039

承認番号
21600AMZ00426
商標名
SELENICA-R Tab.200mg

薬価基準収載年月

2004年7月

販売開始年月

2004年7月

貯法・使用期限等

貯法 

気密容器・室温保存

使用期限

外箱に表示

注意

「取扱い上の注意」の項参照

規制区分

処方箋医薬品

注意−医師等の処方箋により使用すること

組成

成分・含量

1錠中
バルプロ酸ナトリウム200mg

**添加物

エチルセルロース、無水ケイ酸、ステアリン酸Ca、メタクリル酸共重合体L、クエン酸トリエチル、カルナウバロウ

性状

本剤は核錠に水不溶性高分子を二重コーティングした膜制御型の徐放性製剤である。

剤形

徐放性錠剤

白色

におい

無臭

外形


直径9.2mm
厚さ5.0mm
重量0.25g

識別コード

Kowa 603

販売名
セレニカR錠400mg

販売名コード

1139004G3027

承認番号
21800AMZ10040
商標名
SELENICA-R Tab.400mg

薬価基準収載年月

2006年7月

販売開始年月

2006年7月

貯法・使用期限等

貯法 

気密容器・室温保存

使用期限

外箱に表示

注意

「取扱い上の注意」の項参照

規制区分

処方箋医薬品

注意−医師等の処方箋により使用すること

組成

成分・含量

1錠中
バルプロ酸ナトリウム400mg

**添加物

エチルセルロース、無水ケイ酸、ステアリン酸Ca、メタクリル酸共重合体L、クエン酸トリエチル、カルナウバロウ

性状

本剤は核錠に水不溶性高分子を二重コーティングした膜制御型の徐放性製剤である。

剤形

徐放性錠剤

白色

におい

無臭

外形


直径11.2mm
厚さ6.5mm
重量0.49g

識別コード

Kowa 604

一般的名称

バルプロ酸ナトリウム徐放性錠剤

禁忌

(次の患者には投与しないこと)

1.
重篤な肝障害のある患者〔肝障害が強くあらわれ致死的になるおそれがある。〕

2.
本剤投与中はカルバペネム系抗生物質(パニペネム・ベタミプロン、メロペネム水和物、イミペネム水和物・シラスタチン、ビアペネム、ドリペネム水和物、テビペネム ピボキシル)を併用しないこと。(「相互作用」の項参照)1)

3.
尿素サイクル異常症の患者〔重篤な高アンモニア血症があらわれることがある。〕

原則禁忌

(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)

効能又は効果/用法及び用量

1. 各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療。

効能又は効果毎の用法及び用量

通常、バルプロ酸ナトリウムとして400〜1200mgを1日1回経口投与する。ただし、年齢、症状に応じ適宜増減する。

2. 躁病および躁うつ病の躁状態の治療。

効能又は効果毎の用法及び用量

通常、バルプロ酸ナトリウムとして400〜1200mgを1日1回経口投与する。ただし、年齢、症状に応じ適宜増減する。

3. 片頭痛発作の発症抑制。

効能又は効果毎の用法及び用量

通常、バルプロ酸ナトリウムとして400〜800mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状に応じ適宜増減するが、1日量として1000mgを超えないこと。

効能又は効果に関連する使用上の注意

片頭痛発作の発症抑制
本剤は、片頭痛発作の急性期治療のみでは日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること。

使用上の注意

慎重投与

(次の患者には慎重に投与すること)

1.
肝機能障害又はその既往歴のある患者〔肝機能障害が強くあらわれるおそれがある。〕

2.
薬物過敏症の既往歴のある患者

3.
自殺企図の既往及び自殺念慮のある躁病及び躁うつ病の躁状態の患者〔症状が悪化するおそれがある。〕

4.
以下のような尿素サイクル異常症が疑われる患者〔重篤な高アンモニア血症があらわれるおそれがある。〕

(1)
原因不明の脳症若しくは原因不明の昏睡の既往のある患者

(2)
尿素サイクル異常症又は原因不明の乳児死亡の家族歴のある患者

重要な基本的注意

1.
本剤で催奇形性が認められているため、妊娠する可能性のある婦人に使用する場合には、本剤による催奇形性について十分に説明し、本剤の使用が適切であるか慎重に判断すること。(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)

2.
てんかん患者においては、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、てんかん重積状態があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。なお、高齢者、虚弱者の場合には特に注意すること。

3.
片頭痛患者においては、本剤は発現した頭痛発作を緩解する薬剤ではないので、本剤投与中に頭痛発作が発現した場合には必要に応じて頭痛発作治療薬を頓用させること。投与前にこのことを患者に十分に説明しておくこと。

4.
片頭痛患者においては、本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、頭痛発作発現の消失・軽減により患者の日常生活への支障がなくなったら一旦本剤の投与を中止し、投与継続の必要性について検討すること。なお、症状の改善が認められない場合には、漫然と投与を継続しないこと。

5.
重篤な肝障害(投与初期6ヵ月以内に多い。)があらわれることがあるので、投与初期6ヵ月間は定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。その後も連用中は定期的に肝機能検査を行うことが望ましい。
また、肝障害とともに急激な意識障害があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には、直ちに適切な処置を行うこと。

6.
連用中は定期的に腎機能検査、血液検査を行うことが望ましい。

7.
尿素サイクル異常症が疑われる患者においては、本剤投与前にアミノ酸分析等の検査を考慮すること。なお、このような患者では本剤投与中は、アンモニア値の変動に注意し、十分な観察を行うこと。

8.
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

9.
本剤は製剤学的にバルプロ酸ナトリウムの溶出を制御して徐放化させたものであり、服用後一定時間消化管内に滞留する必要がある。従って重篤な下痢のある患者では血中濃度が十分に上昇しない可能性があるので注意すること。

10.
他のバルプロ酸ナトリウム製剤を使用中の患者において使用薬剤を本剤に切り替える場合、血中濃度が変動することがあるので注意すること。

相互作用

併用禁忌

(併用しないこと)

薬剤名等
カルバペネム系抗生物質
パニペネム・ベタミプロン(カルベニン)、メロペネム水和物(メロペン)、イミペネム水和物・シラスタチン(チエナム)、ビアペネム(オメガシン)、ドリペネム水和物(フィニバックス)、テビペネム ピボキシル(オラペネム)

臨床症状・措置方法
てんかんの発作が再発することがある1)

機序・危険因子
バルプロ酸の血中濃度が低下する。

併用注意

(併用に注意すること)

1. 薬剤名等
バルビツール酸剤
 フェノバルビタール等

臨床症状・措置方法
バルプロ酸の作用が減弱、上記薬剤の作用が増強することがある。

機序・危険因子
バルプロ酸の血中濃度が低下する。また、上記薬剤の血中濃度を上昇させる。

2. 薬剤名等
フェニトイン、カルバマゼピン

臨床症状・措置方法
バルプロ酸の作用が減弱、上記薬剤の作用が増強又は、減弱することがある。

機序・危険因子
バルプロ酸の血中濃度が低下する。また、上記薬剤の血中濃度を上昇又は、低下させる。

3. 薬剤名等
エトスクシミド、アミトリプチリン、ノルトリプチリン

臨床症状・措置方法
上記薬剤の作用が増強することがある。

機序・危険因子
上記薬剤の血中濃度を上昇させる。

4. 薬剤名等
クロバザム

臨床症状・措置方法
バルプロ酸の作用が増強されることがある。

機序・危険因子
機序は不明であるが、バルプロ酸の血中濃度が上昇する。

5. 薬剤名等
ラモトリギン

臨床症状・措置方法
上記薬剤の消失半減期が約2倍延長するとの報告がある。

機序・危険因子
肝におけるグルクロン酸抱合が競合する。

6. 薬剤名等
サリチル酸系薬剤
 アスピリン等

臨床症状・措置方法
バルプロ酸の作用が増強されることがある。

機序・危険因子
遊離型バルプロ酸濃度が上昇する。また、バルプロ酸の代謝が阻害される。

7. 薬剤名等
ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム等)、ワルファリン

臨床症状・措置方法
上記薬剤の作用が増強することがある。

機序・危険因子
遊離型の上記薬剤の血中濃度を上昇させる。

8. 薬剤名等
エリスロマイシン、シメチジン

臨床症状・措置方法
バルプロ酸の作用が増強されることがある。

機序・危険因子
上記薬剤が肝チトクロームP-450による薬物代謝を抑制し、バルプロ酸の血中濃度が上昇する。

9. 薬剤名等
クロナゼパム

臨床症状・措置方法
アブサンス重積(欠神発作重積)があらわれたとの報告がある。

機序・危険因子
機序は不明である。

副作用

副作用等発現状況の概要

各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害
セレニカR錠200mgの承認時の臨床試験2)3)により報告された症例66例中、2例(3.0%)に4件の副作用が認められ、アンモニア増加1件(1.5%)、傾眠1件(1.5%)、無為1件(1.5%)、振戦1件(1.5%)であった。

躁病および躁うつ病の躁状態、片頭痛発作の発症抑制
本剤の躁病および躁うつ病の躁状態、片頭痛発作の発症抑制に対する使用においては、厚生省「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて(研第4号・医薬審第104号)」通知に該当する医療用医薬品として承認されたため、副作用発現頻度が明確となる国内での調査を実施していない。

重大な副作用

1.
劇症肝炎等の重篤な肝障害、黄疸、脂肪肝等(頻度不明)を起こすことがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

2.
高アンモニア血症を伴う意識障害(頻度不明)があらわれることがあるので、定期的にアンモニア値を測定するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

3.
溶血性貧血、赤芽球癆、汎血球減少、重篤な血小板減少、顆粒球減少(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと4)

4.
急性膵炎(頻度不明)があらわれることがあるので、激しい腹痛、発熱、嘔気、嘔吐等の症状があらわれたり、膵酵素値の上昇が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

5.
間質性腎炎、ファンコニー症候群(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

6.
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(0.1%未満)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

7.
過敏症症候群(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、初期症状として発疹、発熱がみられ、さらにリンパ節腫脹、肝機能障害、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。

8.
脳の萎縮、認知症様症状(健忘、見当識障害、言語障害、寡動、知能低下、感情鈍麻等)、パーキンソン様症状(静止時振戦、硬直、姿勢・歩行異常等)(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
なお、これらの症状が発現した例では中止により、ほとんどが1〜2ヵ月で回復している5)6)

9.
横紋筋融解症(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビンの上昇等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

10.
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)(頻度不明)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム量の増加、高張尿等があらわれた場合には水分摂取の制限等の適切な処置を行うこと。

11.
*間質性肺炎、好酸球性肺炎(頻度不明)があらわれることがあるので、咳嗽、呼吸困難、発熱等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT等の検査を実施すること。間質性肺炎、好酸球性肺炎が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。

その他の副作用

1. 皮膚
0.1%未満 
脱毛

2. 精神神経系
0.1〜5%未満 
めまい、傾眠、振戦

3. 精神神経系
0.1%未満 
頭痛、不眠

4. 精神神経系
頻度不明注) 
失調、不穏、視覚異常、感覚変化、抑うつ

5. 消化器
0.1〜5%未満 
悪心・嘔吐、胃部不快感

6. 消化器
0.1%未満 
口内炎、食欲不振、腹痛、下痢

7. 消化器
頻度不明注) 
便秘、食欲亢進

8. 肝臓
0.1〜5%未満 
AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、Al-P上昇

9. 血液
0.1〜5%未満 
貧血、白血球減少

10. 血液
0.1%未満 
低フィブリノーゲン血症、好酸球増多

11. 血液
頻度不明注) 
血小板凝集能低下

12. 過敏症
0.1〜5%未満 
発疹

13. その他
0.1〜5%未満 
夜尿・頻尿、高アンモニア血症、体重増加

14. その他
0.1%未満 
けん怠感、浮腫

15. その他
頻度不明注) 
月経異常(月経不順、無月経)、多のう胞性卵巣、血尿、鼻血、口渇、歯肉肥厚、尿失禁、発熱、カルニチン減少

その他の副作用の注意

このような副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量・休薬等の適切な処置を行うこと。

注)「抑うつ」については国外報告、それ以外は国内自発報告に基づく。

高齢者への投与

1.
本剤は、血漿アルブミンとの結合性が強いが、高齢者では血漿アルブミンが減少していることが多いため、遊離の薬物の血中濃度が高くなるおそれがあるので、用量に留意して慎重に投与すること。

2.
てんかん患者においては、連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により、てんかん重積状態があらわれやすいので慎重に投与すること。

3.
片頭痛発作の発症抑制に対する、高齢者における安全性及び有効性については、現在までの国内外の臨床試験で明確なエビデンスが得られていない。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔二分脊椎児を出産した母親の中に、本剤の成分を妊娠初期に投与された例が対照群より多いとの疫学的調査報告があり、また、本剤の成分を投与された母親に、心室中隔欠損等の心奇形や多指症、口蓋裂、尿道下裂等の外表奇形、その他の奇形を有する児を出産したとの報告がある。また、特有の顔貌(前頭部突出、両眼離開、鼻根偏平、浅く長い人中溝、薄い口唇等)を有する児を出産したとする報告がみられる。〕

2.
妊娠中にやむを得ず本剤を投与する場合には、可能な限り単独投与することが望ましい。〔他の抗てんかん剤(特にカルバマゼピン)と併用して投与された患者の中に、奇形を有する児を出産した例が本剤単独投与群と比較して多いとの疫学的調査報告がある。〕

3.
妊娠中の投与により、新生児に呼吸障害、肝障害、低フィブリノーゲン血症等があらわれることがある。

4.
妊娠中の投与により、新生児に低血糖、退薬症候(神経過敏、過緊張、痙攣、嘔吐)があらわれるとの報告がある。

5.
*海外で実施された観察研究において、妊娠中に抗てんかん薬を投与されたてんかん患者からの出生児224例を対象に6歳時の知能指数(IQ)[平均値(95%信頼区間)]を比較した結果、本剤を投与されたてんかん患者からの出生児のIQ[98(95-102)]は、ラモトリギン[108(105-111)]、フェニトイン[109(105-113)]、カルバマゼピン[106(103-109)]を投与されたてんかん患者からの出生児のIQと比較して低かったとの報告がある。なお、本剤の投与量が1000mg/日(本研究における中央値)未満の場合は[104(99-109)]、1000mg/日を超える場合は[94(90-99)]であった7)

6.
*海外で実施された観察研究において、妊娠中に本剤を投与された母親からの出生児508例は、本剤を投与されていない母親からの出生児655,107例と比較して、自閉症発症リスクが高かったとの報告がある[調整ハザード比:2.9(95%信頼区間:1.7-4.9)]8)

7.
動物実験(マウス)で、本剤が葉酸代謝を阻害し、新生児の先天性奇形に関与する可能性があるとの報告がある9)

8.
授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。〔ヒト母乳中へ移行することがある。〕

小児等への投与

1.
低出生体重児、新生児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。

2.
片頭痛発作の発症抑制に対する、小児における安全性及び有効性については、現在までの国内外の臨床試験で明確なエビデンスが得られていない。

過量投与

1. 症状
誤飲や自殺企図による過量服用により意識障害(傾眠、昏睡)、痙攣、呼吸抑制、高アンモニア血症、脳水腫を起こした例が報告されている。外国では死亡例が報告されている。本剤は徐放性製剤であるため、症状が遅れてあらわれることがある。

2. 処置
意識の低下、嚥下反応の消失がなければ早期に胃洗浄を行う。下剤、活性炭投与を行い、尿排泄を促進し、一般的な支持・対症療法を行う。また必要に応じて直接血液灌流、血液透析を行う。ナロキソンの投与が有効であったとする報告がある。

適用上の注意

1. 保存時
本剤は徐放性製剤であり、製剤の吸湿により溶出が加速されることがあるので、吸湿しないように保存させること。

2. 服用時

(1)
本剤は徐放性製剤であり、製剤をかみ砕くことにより溶出が加速されることがあるので、薬剤をかみ砕かないで服用させること。

(2)
錠剤の嚥下能力が低いと考えられる小児等には、事前に本剤が服用可能なことを確認して十分注意し服用させること。また、本剤(錠剤)の服用が困難な小児等には、本剤以外の剤形を選択すること。

(3)
本剤投与後に白色の残が糞便中に排泄されるが、これは賦形剤の一部である。

3. 薬剤交付時
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。(PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することが報告されている。)

その他の注意

海外で実施された本剤を含む複数の抗てんかん薬における、てんかん、精神疾患等を対象とした199のプラセボ対照臨床試験の検討結果において、自殺念慮及び自殺企図の発現のリスクが、抗てんかん薬の服用群でプラセボ群と比較して約2倍高く(抗てんかん薬服用群:0.43%、プラセボ群:0.24%)、抗てんかん薬の服用群では、プラセボ群と比べ1000人あたり1.9人多いと計算された(95%信頼区間:0.6 - 3.9)。また、てんかん患者のサブグループでは、プラセボ群と比べ1000人あたり2.4人多いと計算されている。

薬物動態

1. バルプロ酸の薬物動態の特徴

薬物動態パラメータ(参考:海外文献報告値)
(表1参照)

全身クリアランスに影響を与える因子
バルプロ酸の全身クリアランスは主に肝固有クリアランスと血漿中非結合率の影響を受ける12)15)。バルプロ酸の主代謝経路に影響を与える可能性のある薬剤を併用する場合は、慎重に投与すること。
バルビツール酸製剤、フェニトイン及びカルバマゼピンはバルプロ酸の代謝を誘導すると考えられる16)ので併用には注意が必要である(「相互作用」の項参照)。蛋白結合率が低下した場合、定常状態では総血漿中濃度は低下すると考えられるが、非結合型濃度は低下しないとされている15)17)

有効血中濃度:40〜120μg/mL
各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害、躁病および躁うつ病の躁状態に対する有効血中濃度に関しては各種の報告があるが、その下限は50μg/mLを示唆する報告もあり、上限は150μg/mLとする報告もある。
躁病および躁うつ病の躁状態に対する本剤の使用に際しては、急性期治療を目的としているため、原則的に血中濃度モニタリングの実施は必須ではないが、本剤の用量増減時に臨床状態の変化があった場合や、予期した治療効果が得られない場合等には、必要に応じ血中濃度のモニタリングを行い、用量調整することが望ましい。
片頭痛発作に対する本剤の使用に際しては、有効血中濃度が明確になっていないため、原則的に血中濃度モニタリングの実施は必須ではないが、本剤の用量増減時に臨床状態の悪化があった場合等には、必要に応じ血中濃度のモニタリングを行い、用量調整することが望ましい。

2. 吸収(血中濃度)
健康成人6名にセレニカR錠200mg×1錠(バルプロ酸ナトリウム(以下VPA-Naと略)200mg)をクロスオーバー法により絶食時及び食後(高脂肪食)に単回投与した場合のAUC0-72、Cmax及びTmaxは、それぞれ以下の通りで食事による影響をほとんど受けなかった18)
(表2参照)
健康成人5名にセレニカR錠200mg×4錠(VPA-Na 800mg)を反復投与した場合、投与開始後約5日間で定常状態に達し、日内変動も少なかった19)

3. 代謝・排泄
健康成人6名にセレニカR顆粒3g(VPA-Na 1200mg)を単回投与した場合の血中及び尿中代謝物は、血中では主に3-keto体(AUC0-∞328.15±94.73μg・hr/mL)が検出され、尿中でも主に3-keto体(投与後56hrまでの排泄率34.05±2.57%)が排泄され、以下VPA、3-OH体、4-OH体、PGA、5-OH体、4-keto体、cis-2-en体、trans-2-en体の順であった。また、尿中の総排泄率は投与後56hrまでで61.20±5.59%であった20)

表1

生物学的利用率10) 約100%(剤形の違いによらない) 
血漿中蛋白結合率10) >90%(およそ100μg/mL以上の濃度では結合が飽和する11)) 
分布容積10) 0.1〜0.4L/kg(ほぼ細胞外液に相当) 
全身クリアランス※12) 6〜8mL/hr/kg(健康成人:16〜60歳)
13〜18mL/hr/kg(小児てんかん患者:3〜16歳、単剤投与時)
(高齢者では、全身クリアランスは成人と差はないが、遊離型のクリアランスは低下するとの報告がある13)。) 
尿中排泄率14) 1〜3%(未変化体) 

※吸収率を100%と仮定


表2

  AUC0-72
(μg・hr/mL) 
Cmax
(μg/mL) 
Tmax
(hr) 
絶食時投与 296.29±23.93 8.82±0.52 18.0±4.7 
食後投与 249.91±117.76 8.13±2.78 14.7±1.6 

臨床成績

各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害
セレニカR錠200mgの承認時のクロスオーバー法による比較試験及び一般臨床試験を国内16施設(17診療科)で実施した結果、臨床効果が認められた症例は、60/65例(92.3%)であった2)3)
セレニカR錠200mgとセレニカR顆粒の最低血漿中薬物濃度を比較した36例では、差の90%信頼区間は−9.72〜13.95%(検出力0.876)であった2)

躁病および躁うつ病の躁状態21)22)
国内において、本効能に対する臨床成績が明確となる臨床試験は実施していない。
米国での承認取得の際に評価対象となった2種の二重盲検比較試験の成績概要は次の通りである。

(1)
米国で、双極性障害患者179例を対象に、バルプロ酸、リチウム又はプラセボを3週間投与する二重盲検比較試験が実施された。その結果、著明改善(躁病評価尺度で少なくとも50%以上改善した割合)を示した割合は、バルプロ酸群48%、リチウム群49%であり、バルプロ酸群及びリチウム群ともにプラセボ群25%に比べ有意に優れていた。有害事象についてバルプロ酸群で多く発現した事象は、嘔吐及び疼痛のみであった。

(2)
米国で、リチウムに反応しないかあるいは忍容性のない36例の双極性障害患者について、プラセボを対照にバルプロ酸の安全性と有効性が二重盲検比較試験により検討された。その結果、主要有効性評価項目である躁病評価尺度総合点中央値の変化の割合はバルプロ酸群で54%、プラセボ群で5%とバルプロ酸群で有意に優れていた。プラセボ群に比べバルプロ酸群で有意に発現頻度の高い有害事象は認めなかった。

注意)バルプロ酸の躁病および躁うつ病の躁状態に対する、3週間以上の長期使用については、現在までの国内外の臨床試験で明確なエビデンスは得られていない。

薬効薬理

1. 薬理作用

(1)
急性痙攣モデルでは、マウスの最大電撃痙攣、ペンテトラゾール痙攣、ピクロトキシン痙攣、ビククリン痙攣、ストリキニーネ痙攣、イソニアジド痙攣を抑制する23)24)

(2)
痙攣準備状態を備えたモデルでは、ネコのキンドリング痙攣、マウスの聴原発作、ヒヒの光誘発痙攣に対し抑制作用を示す25)〜28)

(3)
躁病の動物モデルと考えられる、デキサンフェタミンとクロルジアゼポキシドとの併用投与により生じる自発運動亢進作用を有意に抑制する。(マウス、ラット)29)

2. 作用機序
作用機序の1つとして、脳内のGABA・グルタミン酸の代謝経路においてGABA合成に関与しているグルタミン酸脱炭酸酵素活性の低下抑制やGABA分解に関与しているGABAトランスアミナーゼ及びコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素活性を阻害することにより、脳内GABA濃度を増加し、痙攣を抑制することが考えられている24)26)27)30)31)
抗躁作用32)及び片頭痛発作の発症抑制作用33)についてもGABA神経伝達促進作用が寄与している可能性が考えられている。

有効成分に関する理化学的知見

一般名
バルプロ酸ナトリウム(Sodium Valproate)

化学名
Monosodium 2-propylpentanoate

分子式
C8H15NaO2

分子量
166.19

構造式

性状
白色の結晶性の粉末である。水に極めて溶けやすく、エタノール(99.5)又は酢酸(100)に溶けやすい。吸湿性である。

取扱い上の注意

本剤は吸湿性が強いので、服用直前までPTPシートから取り出さないこと。また、保存に際してPTPシートを破損しないよう注意すること(本剤をPTPシートから取り出し一包化調剤することは避けること)。

包装

1.
セレニカR錠200mg PTP:100錠(10錠×10)

2.
セレニカR錠200mg PTP:1000錠(10錠×100)

3.
セレニカR錠400mg PTP:100錠(10錠×10)

主要文献及び文献請求先

主要文献

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文献請求先

主要文献に記載の社内資料につきましても下記にご請求ください。
田辺三菱製薬株式会社 くすり相談センター

〒541-8505 大阪市中央区北浜2−6−18

電話 0120−753−280

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製造販売元
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東京都中央区日本橋本町三丁目4-14

販売
田辺三菱製薬株式会社

大阪市中央区北浜2-6-18

プロモーション提携
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大阪市中央区北浜2-6-18