エムラクリーム


作成又は改訂年月

※2013年5月改訂(第2版、薬価基準収載月記載等)

2012年1月作成 (第1版)

日本標準商品分類番号

871219

薬効分類名

外用局所麻酔剤

承認等

販売名
エムラクリーム

販売名コード

1219800N1023

承認・許可番号

承認番号
22400AMX00023000
欧文商標名
EMLA CREAM

薬価基準収載年月

2012年4月

販売開始年月

2012年5月

貯法・使用期限等

※貯法:

凍結を避け、室温で保存する

使用期限:

2年 (外箱及びチューブに記載)

規制区分

劇薬

処方せん医薬品注)

注)注意−医師等の処方せんにより使用すること

組成

成分・含量(1g中)

日局 リドカイン 25mg
プロピトカイン 25mg

添加物

ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、カルボキシビニルポリマー、pH調節剤

性状

本剤は、白色の均一なクリーム剤である。

一般的名称

リドカイン・プロピトカイン配合クリーム

禁忌

(次の患者には投与しないこと)

(次の患者には使用しないこと)

(1)
メトヘモグロビン血症のある患者[プロピトカインの代謝物であるオルト-トルイジンがメトヘモグロビンを産生し、症状が悪化するおそれがある]

(2)
本剤の成分又はアミド型局所麻酔剤に対して過敏症の既往歴のある患者

効能又は効果

効能又は効果/用法及び用量

皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和

通常、成人には、レーザー照射予定部位に10cm2あたり本剤1gを、密封法(ODT)により60分間塗布する。
なお、1回あたりの塗布量は10gまでとし、塗布時間は120分を超えないこと。

用法及び用量に関連する使用上の注意

本剤を60分間(最大120分間)ODTにより塗布後、本剤を除去し、直ちにレーザー照射を行う。

使用上の注意

慎重投与

(次の患者には慎重に投与すること)

(次の患者には慎重に使用すること)

(1)
グルコース-6-リン酸脱水素(G-6-PD)酵素欠乏患者[メトヘモグロビン血症が発現しやすい。]

(2)
心刺激伝導障害のある患者[症状を悪化させることがある。]

(3)
重篤な肝障害又は重篤な腎障害のある患者[中毒症状が発現しやすくなる。]

相互作用

リドカインは、主として肝代謝酵素CYP1A2及びCYP3A4で代謝される。

併用注意

(併用に注意すること)

薬剤名等 
クラスIII抗不整脈剤
  アミオダロン等

臨床症状・措置方法
心機能抑制作用が増強するおそれがあるので、心電図検査等によるモニタリングを行うこと。

機序・危険因子
作用が増強することが考えられる。

薬剤名等 
サルファ剤
  スルファメトキサゾール
エステル型局所麻酔薬
  プロカイン、アミノ安息香酸エチル
硝酸薬
  ニトログリセリン、亜硝酸アミル

臨床症状・措置方法
メトヘモグロビン血症を起こすことがある。チアノーゼ等の症状が認められた場合には本剤の投与を直ちに中止し、適切な処置を行うこと。

機序・危険因子
いずれも単独投与によりメトヘモグロビン血症が報告されている。

薬剤名等 
アミド型局所麻酔剤
  メピバカイン、ブピバカイン
クラスI抗不整脈薬
  リドカイン、キニジン

臨床症状・措置方法
中毒症状が相加的に起こるおそれがある。

機序・危険因子
併用により中毒症状が相加的に起こることが考えられる。

副作用

国内第I相薬物動態試験、第II相及び第III相臨床試験の3試験において97例中34例(35.1%)に副作用(臨床検査値の異常を含む)が認められ、副作用発現件数は45件であった。副作用は適用部位紅斑33件32例(33.0%)、適用部位蒼白8件8例(8.2%)、紅斑1件1例(1.0%)、潮紅1件1例(1.0%)、錯感覚1件1例(1.0%)、ALT(GPT)増加1件1例(1.0%)であった。

重大な副作用

1. ショック、アナフィラキシー様症状
(頻度不明注1)) 
ショック、アナフィラキシー様症状をおこすことがあるので、不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、便意、耳鳴、発汗、全身潮紅、呼吸困難、血管浮腫(顔面浮腫、喉頭浮腫等)、血圧低下、顔面蒼白、脈拍の異常、意識障害等の症状が認められた場合には本剤の投与を直ちに中止し、適切な処置を行うこと。

2. 意識障害、振戦、痙攣
(頻度不明注1)) 
意識障害、振戦、痙攣等の中毒症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

3. メトヘモグロビン血症
(頻度不明注1)) 
メトヘモグロビン血症があらわれることがあるので、チアノーゼ等の症状が認められた場合には本剤の投与を直ちに中止し、適切な処置を行うこと。

注1)海外において認められた副作用のため頻度不明。

その他の副作用

精神神経系
(1〜10%) 
錯感覚

精神神経系
(頻度不明注2)
浮動性めまい、感覚鈍麻、頭痛

消化器系
(頻度不明注2)
悪心、嘔吐

皮膚
(10%以上) 
紅斑

皮膚
(1〜10%) 
潮紅、蒼白

皮膚
(頻度不明注2)
小水疱、発疹、そう痒症、蕁麻疹、接触性皮膚炎、湿疹、皮膚灼熱感、皮膚炎、皮膚色素過剰

その他
(1〜10%) 
ALT(GPT)増加

その他
(頻度不明注2)
血腫、疼痛、変色、浮腫、倦怠感

注2)海外での自発報告のため、頻度不明。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]

2.
授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。[リドカインはヒト母乳中へ移行することが報告されている。]

小児等への投与

1.
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する用法・用量及び安全性は確立していない。(国内における使用経験がない。)

2.
海外において、特に低出生体重児、新生児又は乳児(1歳未満)では重篤なメトヘモグロビン血症が多く報告されている。

過量投与

局所麻酔剤の血中濃度の上昇に伴い、神経系興奮症状が発現し、重症例では中枢神経抑制及び循環抑制を呈する。また、高用量のプロピトカインは、メトヘモグロビン血症を引き起こすことがあり、本剤の大量投与によりメトヘモグロビン血症が報告されている。

徴候、症状:

中枢神経系の症状:
初期症状として不安、興奮、多弁、口周囲の知覚麻痺、舌のしびれ、ふらつき、聴覚過敏、耳鳴、視覚障害、振戦等があらわれる。症状が進行すると意識消失、全身痙攣があらわれ、これらの症状に伴い低酸素血症、高炭酸ガス血症が生じるおそれがある。より重篤な場合には呼吸停止を来すこともある。

心血管系の症状:
血圧低下、徐脈、心筋収縮力低下、心拍出量低下、刺激伝導系の抑制、心室性頻脈及び心室細動等の心室性不整脈、循環虚脱、心停止等があらわれる。

処置:
呼吸を維持し、酸素を十分投与することが重要である。必要に応じて人工呼吸を行う。振戦や痙攣が著明であれば、ジアゼパム又は超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウム等)を投与する。心機能抑制に対しては、カテコールアミン等の昇圧剤を投与する。心停止を来した場合には直ちに心マッサージを開始する。

徴候、症状:

メトヘモグロビン血症の症状:
メトヘモグロビン血症では酸素運搬能力が減少し、めまい、悪心、頭痛、呼吸困難、錯乱、痙攣及び昏睡を起こす。

処置:
メトヘモグロビン血症の症状は通常、薬剤の中止により消失するが、重症の場合はメチレンブルーの投与等、適切な処置を行うこと。

適用上の注意

使用部位

(1)
損傷皮膚には使用しないこと。

(2)
性器皮膚及び粘膜に使用しないこと。(国内における使用経験がない。)

(3)
眼に入らないように注意すること。(ウサギ眼粘膜刺激試験において、結膜充血、眼瞼腫脹、角膜損傷等の重度かつ持続性のある刺激反応が認められている。)

(4)
中耳に入らないように注意すること。(ラット及びモルモットの中耳及び内耳に投与した場合、形態的及び機能的変化を示すことが報告されている。)

その他の注意

1.
動物実験(マウス・ラット)において、プロピトカインの代謝産物であるオルト-トルイジンの長期大量投与により肝、尿路上皮等に腫瘍が発生したとの報告があり、IARC(国際がん研究機関)においてグループ1(ヒトに対して発がん性がある物質)と評価されている1)

2.
ポルフィリン症の患者に投与した場合、急性腹症、四肢麻痺、意識障害等の急性症状を誘発するおそれがある。

3.
国内ではシミ、シワ、ニキビ跡、脱毛等(半導体レーザーや炭酸ガスレーザー等を用いた皮膚レーザー照射療法)に対する本剤の有効性及び安全性は検討されていない。[臨床成績の項参照]

薬物動態

1. 血漿中濃度
健常成人男子に本剤を顔面(頬部)に2.5g/25cm2(顔面低用量群)、5g/50cm2(顔面中用量群)、10g/100cm2(顔面高用量群)及び手背及び前腕部に各2.5g/25cm2(合計5g/50cm2)を2時間密封塗布し、リドカイン及びプロピトカインの薬物動態の検討を行った。顔面低用量群、顔面中用量群及び顔面高用量群の平均血漿中リドカイン及びプロピトカイン濃度は、3群ともおよそ塗布2時間後にピーク値が認められ、薬剤除去後、急速に低下した2)

(表1参照)



血漿中リドカイン濃度の経時的推移(平均値±標準偏差、n=6)




血漿中プロピトカイン濃度の経時的推移(平均値±標準偏差、n=6)

2. 分布

リドカイン
ヒト血漿における蛋白結合率は、1〜5μg/mLにおいて40.7〜58.1%であり3)、α-1酸性糖蛋白及びアルブミンと結合する4)。血液/血漿中濃度比は0.8である5)。妊婦にリドカイン塩酸塩を断続的に硬膜外投与したところ、リドカイン225〜1200mgの用量において、出産時の母体血中リドカイン濃度は0.0〜6.7μg/mL、新生児の血中リドカイン濃度は0.0〜3.6μg/mLで、胎盤を通過する6)

プロピトカイン
ヒト血漿における蛋白結合率は、0.5〜16μg/mLにおいて約30%であり、ほぼ一定であった7)。α-1酸性糖蛋白及びアルブミンと結合する8)。血液/血漿中濃度比は1.1である5)。妊婦にプロピトカイン塩酸塩を断続的に硬膜外投与したところ、320〜1260mgの用量において、出産時の母体血中プロピトカイン濃度は0.0〜5.0μg/mL、新生児の血中プロピトカイン濃度は0.0〜3.4μg/mLで、胎盤を通過する6)

3. 代謝

リドカイン
リドカインは主として肝臓でN -脱メチル体monoethylglycinexylidide(MEGX)に代謝された後、glycinexylidide(GX),2,6-xylidineに代謝され、投与量の約70%が4-hydroxy-2,6-xylidineとして尿中に排泄される9)

プロピトカイン
プロピトカインは肝臓でN -propylalanineとo -toluidineに加水分解された後、o -toluidineは6-hydroxy-o -toluidine及び4-hydroxy-o -toluidineに代謝される10)

4. 排泄(参考:ラット)

リドカイン
14C-リドカインを有色雄性ラットに5mg/kgの用量で単回静脈内投与したところ、投与24時間後までに投与放射能の68〜72%が尿中に、13〜18%が糞中に排泄された11)

プロピトカイン
14C-プロピトカイン塩酸塩をラットに単回腹腔内投与したところ、投与6時間までに約25%が尿中に排泄され、その大部分が代謝物であった。糞中には投与24時間後までにほとんど排泄されなかった12)

表1 本剤を塗布したときのリドカイン及びプロピトカインの薬物動態パラメータ

測定対象 投与群 Cmax
(ng/mL) 
AUC0-24h
(ng・h/mL) 
tmax
(h) 
t1/2
(h) 
リドカイン 顔面低用量
(2.5g/25cm2
42.3±27.5 149.8±68.6 1.59±0.50 3.20±0.93 
リドカイン 顔面中用量
(5g/50cm2
62.3±15.9 266.3±78.4 1.84±0.41 3.62±0.76 
リドカイン 顔面高用量
(10g/100cm2
98.9±21.8 440.1±68.2 2.10±0.20 4.10±0.42 
リドカイン 手背・前腕部
(5g/50cm2
8.2±1.6 75.0±7.8 4.83±1.83 5.90±1.42 
プロピトカイン 顔面低用量
(2.5g/25cm2
26.7±16.0 82.8±34.9 1.84±0.52 1.99±0.39 
プロピトカイン 顔面中用量
(5g/50cm2
35.1±8.9 123.2±28.6 1.59±0.49 2.40±0.49 
プロピトカイン 顔面高用量
(10g/100cm2
60.1±8.4 233.5±17.9 1.93±0.38 2.41±0.41 
プロピトカイン 手背・前腕部
(5g/50cm2
5.4±1.8 37.1±3.0 3.83±0.41 4.08±1.81 

平均値±標準偏差、n=6


臨床成績

国内第III相臨床試験13)

皮膚レーザー照射療法を受ける太田母斑、扁平母斑、単純性血管腫及び毛細血管拡張症患者58例を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験において、レーザー照射予定部位10cm2あたり本剤1gを、密封法(ODT)により60分間塗布したとき、痛みの程度を示すVAS(Visual Analogue Scale)値は、プラセボと比較して有意に低かった。

 症例数 VAS値注3) P 値 
エムラクリーム 28 18.1±20.09 P <0.001 
プラセボ 30 49.6±26.09 P <0.001 

注3)VAS値:疼痛の程度を0〜100mm(0:痛くない、100:すごく痛い)のスケールで評価。
平均値±標準偏差


薬効薬理

作用機序
リドカイン及びプロピトカインは、細胞膜上のナトリウムチャネルを可逆的に阻害し、神経細胞の脱分極時に起こる一過性のナトリウムイオン膜透過性亢進を抑制させ、神経インパルスの発生及び伝導を抑制することにより麻酔作用を発現する14)

局所麻酔効果
0.55〜10%リドカイン/プロピトカイン配合剤、10%リドカイン単剤、10%プロピトカイン単剤を用いたモルモット背部皮膚ピンプリック法による局所麻酔作用の評価では、1.5、2.5、5および10%リドカイン/プロピトカイン配合剤は、10%リドカイン単剤及び10%プロピトカイン単剤より有意に高い局所麻酔効果を示した15)
なお、ここでいう1.5、2.5、5および10%リドカイン/プロピトカイン配合剤とは、リドカイン/プロピトカインをそれぞれ、0.74/0.76、1.24/1.26、2.5/2.5および5/5%を含む配合剤を示し、配合剤の濃度はリドカインとプロピトカインの総量である。

有効成分に関する理化学的知見

リドカイン

一般名
リドカイン (Lidocaine) (JAN) (日局)

化学名
2-Diethylamino-N -(2,6-dimethylphenyl)acetamide

構造式

分子式
C14H22N2O

分子量
234.34

融点
66〜69℃

性状
リドカインは白色〜微黄色の結晶又は結晶性の粉末である。メタノール又はエタノール(95)に極めて溶けやすく、酢酸(100)又はジエチルエーテルに溶けやすく、水にほとんど溶けない。希塩酸に溶ける。

プロピトカイン

一般名
プロピトカイン (Propitocaine) (JAN)

化学名
(2RS )-N -(2-Methylphenyl)-2-(propylamino)propanamide

構造式

分子式
C13H20N2O

分子量
220.31

融点
36〜39℃

性状
プロピトカインは白色の結晶性の粉末である。エタノール(95)又はアセトンに極めて溶けやすく、水に溶けにくい。

包装

エムラクリーム:5g×5 (アルミチューブ)

主要文献及び文献請求先

主要文献

1)
IARC:IARC MONOGRAPHS. 2010; 99:395-457

2)
佐藤製薬株式会社 社内資料;第I相臨床試験

3)
Tucker GT:Anesthesiology. 1970; 33:304-314

4)
Arthur GR:Baillieres Clin Anaesthesiol. 1991; 5:635-658

5)
Burm AG:Clin Pharmacokinet. 1989; 16:283-311

6)
Epstein BS:Anesth Analg. 1968; 47:223-227

7)
Bachmann B:Acta Anaesthesiol Scand. 1990; 34:311-314

8)
西村 清司:麻酔. 1975; 24:245-252

9)
Keenaghan JB:J Pharmacol Exp Ther. 1972; 180:454-463

10)
Hjelm M:Biochem Pharmacol. 1972; 21:2825-2834

11)
佐藤製薬株式会社 社内資料;ラットにおける14C-リドカイン単回静脈内投与時の尿糞中排泄

12)
Akerman B:Acta Pharmacol et Toxicol. 1966; 24:389-403

13)
佐藤製薬株式会社 社内資料;第III相臨床試験

14)
Ragsdale, DS., et al.:Science 1994; 265:1724-1728

15)
佐藤製薬株式会社 社内資料;薬理試験

文献請求先

主要文献(社内資料含む)は下記にご請求ください。

佐藤製薬株式会社 医薬事業部

〒107-0051 東京都港区元赤坂1丁目5番27号

TEL. 03-5412-7817

FAX. 03-3796-6560

製造販売業者等の氏名又は名称及び住所

※製造販売元
佐藤製薬株式会社

東京都港区元赤坂1丁目5番27号

提携
アストラゼネカ社(英国)