デスモプレシン・スプレー10協和


作成又は改訂年月

**2014年5月改訂(構造式の表記変更、他)〈第9版〉

*2011年1月改訂(組成の一部変更による貯法の変更、他)

日本標準商品分類番号

872419

日本標準商品分類番号等

再審査結果公表年月(最新)
2010年3月

国際誕生年月
1972年12月

薬効分類名

夜尿症用剤

承認等

販売名
デスモプレシン・スプレー10協和

販売名コード

2419700R2029

承認・許可番号

承認番号
21500AMY00004
欧文商標名
DESMOPRESSIN・Spray 10 Kyowa

薬価基準収載年月

2003年6月

販売開始年月

2003年6月

貯法・使用期限等

*貯法

室温保存

使用期限

包装に表示の期限内に使用すること

規制区分

劇薬

処方せん医薬品

注意−医師等の処方せんにより使用すること

組成

デスモプレシン・スプレー10協和は、1瓶5mL中に次の成分を含有する。

有効成分

デスモプレシン酢酸塩水和物500μg

*添加物

ベンザルコニウム塩化物液、日局塩化ナトリウム、日局クエン酸水和物、リン酸水素二ナトリウム二水和物

性状

外観

無色澄明の液

*規格pH域

4.8〜5.2

識別記号

KH408(ラベルに表示)

※定量噴霧式点鼻容器入り(褐色瓶)

一般的名称

DDAVPスプレー

警告

デスモプレシン酢酸塩水和物経鼻製剤を夜尿症に対し使用した患者で重篤な低ナトリウム血症による痙攣が報告されていることから、患者及びその家族に対して、水中毒(低ナトリウム血症)が発現する場合があること、水分摂取管理の重要性について十分説明・指導すること。[「重要な基本的注意」、「重大な副作用」の項参照]

禁忌

(次の患者には投与しないこと)

低ナトリウム血症の患者[低ナトリウム血症を増悪させるおそれがある。]

効能又は効果

効能又は効果/用法及び用量

尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う下記疾患

夜尿症

通常、1日1回就寝前にデスモプレシン酢酸塩水和物として10μg(1噴霧)から鼻腔内に投与を開始し、効果不十分な場合は、1日1回就寝前にデスモプレシン酢酸塩水和物として20μg(2噴霧)に増量する。
なお、1日最高用量はデスモプレシン酢酸塩水和物として20μg(2噴霧)とする。

(鼻腔内投与法)
「適用上の注意」の項参照

使用上の注意

慎重投与

(次の患者には慎重に投与すること)

1.
高血圧を伴う循環器疾患、高度動脈硬化症、冠動脈血栓症、狭心症の患者[血圧上昇により症状を悪化させるおそれがある。]

2.
下垂体前葉不全を伴う患者[水中毒が発現しやすい。]

3.
アレルギー性鼻炎を起こしたことのある患者

4.
鼻疾患を有する患者[鼻腔内投与のため吸収が安定しないおそれがある。]

5.
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

重要な基本的注意

1.
本剤投与中に水中毒症状を来すことがあるので、次の点に注意すること。

(1)
過度の飲水を避け、点滴・輸液による水分摂取にも注意すること。

(2)
本剤による治療を1週間以上続ける場合には、血漿浸透圧及び血清ナトリウム値の検査を実施すること。

(3)
本剤投与中は定期的(1ヵ月毎)に患者の状態を観察し、水中毒を示唆する症状(けん怠感、頭痛、悪心・嘔吐等)の発現に十分注意すること。

2.
水中毒の発現を予防するために患者及びその家族に次の点について十分説明・指導すること。

(1)
投与の2〜3時間前(夕食後)より翌朝迄の飲水は極力避けること。過度に飲水してしまった場合は本剤の投与を行わないこと。発熱、喘息等の飲水が増加する疾患を合併している場合は特に注意すること。

(2)
就眠前の排尿を徹底し、指示された投与量を厳守すること。

(3)
水中毒を示唆する症状(けん怠感、頭痛、悪心・嘔吐等)があらわれた場合には直ちに投与を中断し、速やかに医師に連絡すること。

(4)
他院や他科を受診する際には、本剤投与中である旨を担当医師に報告すること。

3.
本剤使用前に観察期を設け、起床時尿を採取し、夜尿翌朝尿浸透圧の平均値が800 mOsm/L以下あるいは尿比重の平均値が1.022以下を目安とし、尿浸透圧あるいは尿比重が低下していることを確認すること1)2)

4.
本疾患は年齢とともに自然に軽快、治癒する傾向がみられるので、定期的(3ヵ月前後)に治療を1〜2週間中止して患者の夜尿状況を観察するなど、漫然と本剤の投与を継続しないこと。

5.
本剤は原則として6歳以上の患者に使用すること。

相互作用

併用注意

(併用に注意すること)

薬剤名
三環系抗うつ剤(イミプラミン塩酸塩等)

臨床症状・措置方法
低ナトリウム血症性の痙攣発作の報告があるので、血清Na、血漿浸透圧等をモニターすること。

機序・危険因子
上記薬剤は抗利尿ホルモンを分泌し、水分貯留のリスクを増すことがある。

副作用

副作用等発現状況の概要

本剤の承認時までの調査315例中、副作用及び臨床検査値異常の発現例は31例(発現率9.8%)、54件であった。
主な副作用は、頭痛、食欲不振各4件(1.3%)、嘔気、顔面浮腫各3件(1.0%)、嘔吐、腹痛、鼻出血、発熱、不眠、鼻部不快感各2件(0.6%)等であった。 また、主な臨床検査値異常はヘモグロビン減少5件(1.6%)、尿蛋白陽性化2件(0.6%)、ヘマトクリット減少2件(0.6%)、BUN上昇2件(0.6%)、AST(GOT)上昇1件(0.3%)、ALT(GPT)上昇1件(0.3%)等であった。
本剤の市販後の使用成績調査700例中、副作用及び臨床検査値異常の発現例は5例(発現率0.7%)、6件であった。
副作用は、頭痛2件(0.3%)、傾眠、嘔気、AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇各1件(0.1%)であった。(再審査終了時)
また、本剤と同一成分であるデスモプレシン点鼻液協和の承認時までの調査及び1982年4月までの市販後の副作用頻度調査、デスモプレシン・スプレー2.5協和の承認時までの調査においては1,305例中、副作用の発現例は159例(12.2%)で237件であった。 主な副作用は、頭痛66件(5.1%)、嘔気・嘔吐41件(3.1%)、浮腫25件(1.9%)、鼻粘膜刺激21件(1.6%)、水中毒〔低ナトリウム血症〕20件(1.5%)等であった。

重大な副作用

脳浮腫、昏睡、痙攣等を伴う重篤な水中毒があらわれることがあるので、過量な水分の摂取には十分注意し、異常が認められた場合には投与を中止し、高張食塩水の注入、フロセミドの投与等の適切な処置を行うこと。(頻度不明:同一成分での国外報告、国内自発報告に基づく)

その他の副作用

1. 代謝
0.5〜5%未満 
浮腫、低ナトリウム血症

2. 精神神経系
0.5〜5%未満 
頭痛

3. 精神神経系
0.5%未満 
強直性痙攣、眠気、めまい、不眠

4. 過敏症
0.5%未満 
全身そう痒感、発疹、顔面浮腫、蕁麻疹

5. 消化器
0.5〜5%未満 
嘔気・嘔吐

6. 消化器
0.5%未満 
食欲不振、腹痛

7. 循環器
0.5%未満 
顔面蒼白、のぼせ

8. その他
0.5〜5%未満 
鼻粘膜刺激

9. その他
0.5%未満 
鼻炎、発汗、全身けん怠感、鼻出血、発熱

上記のような副作用(点鼻液、スプレー2.5、スプレー10)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量・休薬等の適切な処置を行うこと。

高齢者への投与

高齢者では生理機能が低下しているので症状を観察しながら慎重に投与すること。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]

2.
授乳婦に投与する場合には授乳を中止させることが望ましい。[授乳中の投与に関する安全性は確立していない。]

小児等への投与

低出生体重児、新生児、乳児及び6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない。

過量投与

症状
過量投与(用法・用量を超える量)により水分貯留並びに低ナトリウム血症のリスクが高まり、頭痛、冷感、嘔気、痙攣、意識喪失等があらわれることがある。

処置
投与を中止し、水分を制限する。症状がある場合は等張若しくは高張食塩水の注入、フロセミドの投与等適切な処置を行う。

適用上の注意

1. 投与時
投与前には吸収を安定させるため鼻をかむなどの注意をすること。

2. スプレーによる鼻腔内投与法

(1)
容器から保護キャップを外す。(図1参照)

(2)
容器からストッパーを外す。(図2参照)

(3)
親指で底部を支え、人差指と中指でポンプを押えて容器を持つ。(図3参照)

注意1:
本剤を初めて使用するときには、ポンプを数回(4回程度)押してチューブに薬液が吸い上げられるようにし、薬液が霧状に出てくることを確認してから使用する。
また、長期間(1週間以上)使用していなかった場合等にもポンプを1回若しくは薬液が霧状に出てくるまで空打ちしてから使用する必要がある。

注意2:
スプレー使用時には、瓶の内側のチューブの先端が必ず薬液の中に入っている状態で使用する。

(4)
頭を少し後ろに傾け、ノズルの先端を鼻腔に入れ、息を止めてスプレーする。(図4参照)
スプレー回数が2回の場合は、左右の鼻腔にスプレーする。

(5)
スプレー後は薬液を鼻の奥まで行き渡らせるように、頭を後ろに傾けた状態で軽く鼻を押え、鼻から静かに息を吸うようにする。(図5参照)

(6)
使用後はストッパーを取り付けノズルの先端をふいて、保護キャップをする。

(7)
本スプレー剤の1容器中の噴霧回数は30回である。

※製品に同封されている「デスモプレシン・スプレー10協和のご使用にあたって」の説明文書もご参照ください。

*3. 保管
使用しないときは、高温を避け、瓶を立てた状態にして保管する。

注意:
ポケット等、体温が直接伝わるところに入れて携帯すると液漏れを起こすおそれがあるので、携帯時には収納ケースにおさめてバッグ等に入れて携帯する。

その他の注意

動物実験(ラット)で泌乳低下(母乳の出が悪くなる)の可能性が示唆されている。

薬物動態

1. 吸収3)
健常成人12名にデスモプレシン酢酸塩水和物(DDAVP)10、20、40μgを鼻腔内投与した場合の血漿中濃度の推移及び薬物動態パラメータは下記のとおりである。(薬物動態の表1参照)

2. 分布

体組織への分布(参考:ラットでの試験データ)4)
ラットに125Iで標識したデスモプレシン0.2μgを点鼻投与し、30分後に放射能濃度を測定したところ、甲状腺>膀胱>腎臓>肝臓の順での分布が認められた。

移行性(参考:ラットでの試験データ)5)

胎児への移行性
125I−デスモプレシン0.3μgを点鼻投与30分後の胎児における放射能濃度は母体血漿の約1/10であった。

母乳中への移行性
125I−デスモプレシン0.3μgを点鼻投与30分後の乳汁中放射能濃度は血漿の約1.4倍であった。

蛋白結合率(限外ろ過法)6)
薬物動態の表2参照。

3. 排泄7)
尿崩症患者の糸球体でろ過されたDDAVPの約60%が尿中に排泄される。

表1 薬物動態パラメータ

パラメータ Cmax(pg/mL) Tmax(hr) T1/2(hr) AUC0〜∞(pg・hr/mL) 
投与量10μg 15.0±13.0 0.52±0.31 2.56±0.70 50.2±46.2 
投与量20μg 30.2±16.7 0.81±0.57 3.09±1.26 132±80 
投与量40μg 57.7±31.3 0.46±0.23 2.60±0.53 205±106 

mean±S.D.


表2 蛋白結合率(限外ろ過法)

添加濃度(pg/mL) 50 100 
血清蛋白結合率(%) 76.3±3.3 74.2±2.8 74.0±3.4 

mean±S.D.


臨床成績

臨床成績8)
夜尿症患児(夜尿翌朝の起床時尿の平均尿浸透圧≦800 mOsm/Lあるいは平均尿比重≦1.022)を対象とし、プラセボを対照薬とした二重盲検比較試験において、年齢8.9±1.8歳(平均±標準偏差)、年齢範囲6〜14歳患児の夜尿日数の減少は平均±標準偏差で本剤が4.3±4.1日、プラセボが1.7±3.1日であったことから、本剤はプラセボに比べ有意に夜尿日数を減少させることが確認された(p<0.001)。副作用の発現率は本剤10.5%(8/76例)、プラセボ15.8%(12/76例)であり、両群間に有意差は認められなかった。(p=0.472)。

薬効薬理

1. 抗利尿作用9)
ラットに蒸留水を25mL/kg経口投与した後、本剤を皮下投与し、本剤投与後5時間までの尿量を測定したところ、0.1ng/kg以上で用量の増加に伴い尿量は減少した。

2. 作用機序

(1) バソプレシンV2受容体に対する作用10)11)
本剤のラットにおけるバソプレシンV1、V2受容体およびオキシトシン受容体に対する結合親和性(Ki)はそれぞれ1748, 1.04, 481nmol/Lであり、バソプレシンV2受容体に選択的な結合親和性を示した(Ki:1.04nmol/L)。またムスカリン受容体(M1, M2, M3)への結合親和性はほとんど認められなかった(Ki>1×105nmol/L)。

(2) 水及び尿素透過性亢進作用12)
単離したゴールデンハムスター腎髄質内層部集合管において、管腔膜側から基底膜側への水及び尿素の透過性を、本剤はそれぞれ0.01nmol/L以上、0.1nmol/L以上の濃度で亢進した。

**有効成分に関する理化学的知見

1. 一般名
デスモプレシン酢酸塩水和物 Desmopressin Acetate Hydrate

2. 化学名
1-Deamino-8-D-arginine-vasopressin acetate trihydrate

3. 略名
DDAVP

4. 分子式
C46H64N14O12S2・C2H4O2・3H2O=1183.31

5. 構造式

6. 性状
白色の粉末である。

7. 溶解性
水、メタノール又は酢酸(100)に溶けやすく、エタノール(99.5)に溶けにくい。

包装

1瓶

主要文献及び文献請求先

主要文献

1)
赤司俊二,他:小児科, 35, (3), 263, (1994)

2)
赤司俊二:小児科診療, 53, 722, (1990)

3)
社内資料:角尾道夫,他;薬物動態試験(ヒト) 

4)
西垣淳子,他:基礎と臨床, 29, (10), 2517, (1995)

5)
西垣淳子,他:基礎と臨床, 29, (10), 2553, (1995)

6)
社内資料:倉光智子, 他;125I-KW8008のin vitro蛋白結合

7)
清水倉一,他:最新医学, 33, (9), 1875, (1978)

8)
帆足英一,他:小児科臨床, 56, (5), 965, (2003)

9)
社内資料:大野哲司,他;尿排泄量に対する作用(ラット)

10)
社内資料:渕上淳一,他;KW-8008の受容体結合能測定試験

11)
社内資料:澁澤幸一,他;KW-8008のOxytocin受容体に対する親和性の検討

12)
社内資料:森 辰也,他;水及び尿素透過性亢進作用

**文献請求先・製品情報お問い合わせ先

主要文献に記載の社内資料につきましても下記にご請求下さい。

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FAX 03(3282)0102

製造販売業者等の氏名又は名称及び住所

製造販売元
協和発酵キリン株式会社

東京都千代田区大手町1-6-1

プロモーション提携
フェリング・ファーマ株式会社

東京都港区虎ノ門2-3-17

提携
フェリング インターナショナルセンター SA

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その他の説明

警告設定2008年3月