イナビル吸入粉末剤20mg


作成又は改訂年月

**2014年10月改訂(第7版)

*2013年12月改訂

日本標準商品分類番号

87625

日本標準商品分類番号等

効能又は効果追加承認年月(最新)
*2013年12月

国際誕生年月
2010年9月

薬効分類名

長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤

承認等

販売名
イナビル吸入粉末剤20mg

販売名コード

6250703G1022

承認・許可番号

承認番号
22200AMX00925
商標名
INAVIR DRY POWDER INHALER

薬価基準収載年月

2010年10月

(健保等一部限定適用)注)
注)予防の目的で使用した場合は、保険給付されません(「保険給付上の注意」の項参照)。

販売開始年月

2010年10月

貯法・使用期限等

貯法

室温保存

使用期限

包装に表示の使用期限内に使用すること。

規制区分

処方箋医薬品

※注意−医師等の処方箋により使用すること

組成

1容器中に次の成分を含有

有効成分

ラニナミビルオクタン酸エステル水和物
20.76mg(ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mg)

添加物

乳糖水和物注)
**注)夾雑物として乳蛋白を含む。

性状

容器中の内容物は白色の粉末である。

一般的名称

ラニナミビルオクタン酸エステル水和物吸入粉末剤

警告

1.
本剤の使用にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること(「効能又は効果に関連する使用上の注意」の項参照)。

2.
*インフルエンザウイルス感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤の予防使用はワクチンによる予防に置き換わるものではない。

禁忌

(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能又は効果

効能又は効果/用法及び用量

*A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防

1. 治療に用いる場合

成人:
ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。

小児:
10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。
10歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。

2. *予防に用いる場合
成人及び10歳以上の小児:ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを1日1回、2日間吸入投与する。

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.
治療に用いる場合は、症状発現後、可能な限り速やかに投与を開始することが望ましい。[症状発現から48時間を経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない。]

2.
*予防に用いる場合は、次の点を注意して使用すること。

(1)
インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始する。[接触から48時間を経過後に投与を開始した場合における有効性を裏付けるデータは得られていない。]

(2)
本剤の服用開始から10日以降のインフルエンザウイルス感染症に対する予防効果は確認されていない。

3.
*本剤は、1容器あたりラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを含有し、薬剤が2箇所に充填されている。治療に用いる場合は、成人及び10歳以上の小児には2容器(計4箇所に充填された薬剤をそれぞれ吸入)、10歳未満の小児には1容器(計2箇所に充填された薬剤をそれぞれ吸入)を投与し、予防に用いる場合は、1回の吸入で1容器(計2箇所に充填された薬剤をそれぞれ吸入)を投与すること(「適用上の注意」の項参照)。

効能又は効果に関連する使用上の注意

1.
治療に用いる場合は、抗ウイルス薬の投与が全てのA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療に必須ではないことを踏まえ、本剤の使用の必要性を慎重に検討すること。

2.
*予防に用いる場合は、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。

(1)
高齢者(65歳以上)

(2)
慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者

(3)
代謝性疾患患者(糖尿病等)

(4)
腎機能障害患者

3.
本剤はC型インフルエンザウイルス感染症には効果がない。

4.
本剤は細菌感染症には効果がない(「重要な基本的注意」の項参照)。

使用上の注意

重要な基本的注意

1.
因果関係は不明であるものの、本剤を含む抗インフルエンザウイルス薬投薬後に異常行動等の精神神経症状を発現した例が報告されている。小児・未成年者については、異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、1)異常行動の発現のおそれがあること、2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状があらわれるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。

2.
インフルエンザウイルス感染症により気道過敏性が亢進することがあり、類薬において、吸入剤の投与後に気管支攣縮や呼吸機能の低下がみられた例が報告されている。気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患等の慢性呼吸器疾患の患者では、患者の状態を十分に観察しながら投与すること。

3.
高齢者、基礎疾患(糖尿病を含む慢性代謝性疾患、慢性腎機能障害、慢性心疾患)を有する患者、あるいは免疫低下状態の患者等では本剤の使用経験が少ない。これらの患者へ投与する場合には、患者の状態を十分に観察しながら投与すること。

4.
細菌感染症がインフルエンザウイルス感染症に合併したり、インフルエンザ様症状と混同されることがある。細菌感染症の場合には、抗菌剤を投与するなど適切な処置を行うこと(「効能又は効果に関連する使用上の注意」の項参照)。

5.
本剤投与後に失神やショック症状があらわれたとの報告がある。この失神やショック症状はインフルエンザウイルス感染症に伴う発熱、脱水等の全身状態の悪化に加え、本剤を強く吸入したこと又は長く息を止めたことが誘因となった可能性及び本剤による可能性がある。患者には使用説明書に記載されている吸入法を十分に理解させ、くつろいだ状態(例えば座位等)で吸入するよう指導すること。また、このような症状があらわれた場合には、患者に仰臥位をとらせ安静に保つとともに、補液を行うなど適切な処置を行うこと。

副作用

副作用等発現状況の概要

治療

国内・海外(台湾、韓国、香港)の臨床試験において、総症例1,571例中159例(10.1%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は、下痢(4.7%)、悪心(0.8%)、ALT(GPT)上昇(0.8%)、胃腸炎(0.7%)等であった。〔承認時〕

製造販売後臨床試験において、総症例102例中14例(13.7%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は、下痢(2.9%)等であった。〔製造販売後臨床試験終了時〕

使用成績調査(調査期間:2010年11月〜2011年4月)において、総症例3,542例中50例(1.4%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は、下痢(0.31%)、めまい(0.11%)、悪心(0.08%)、蕁麻疹(0.08%)、発熱(0.08%)等であった。〔使用成績調査終了時〕

*予防

国内の臨床試験において、総症例1,517例中59例(3.9%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は、下痢(0.7%)、頭痛(0.5%)等であった。〔承認時〕

重大な副作用

ショック、アナフィラキシー様症状
(頻度不明注)
ショック、アナフィラキシー様症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、冷汗等の異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

重大な副作用(類薬)

他の抗インフルエンザウイルス薬(吸入剤)で以下の重大な副作用が報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

(1)
気管支攣縮、呼吸困難

(2)
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、多形紅斑

その他の副作用

過敏症
0.1%以上 
蕁麻疹

過敏症
0.1%未満 
発疹

過敏症
頻度不明注) 
紅斑、そう痒

消化器
0.1%以上 
下痢、胃腸炎、悪心、嘔吐、腹痛、口内炎

消化器
0.1%未満 
腹部膨満、食欲減退、腹部不快感

*精神神経系
0.1%以上 
めまい、頭痛

血液
0.1%以上 
白血球数増加

*肝臓
0.1%以上 
ALT(GPT)上昇、AST(GOT)上昇、γ-GTP上昇

肝臓
0.1%未満 
肝機能異常

泌尿器
0.1%未満 
尿蛋白

*その他
0.1%以上 
CRP上昇、尿中ブドウ糖陽性

上記の副作用があらわれることがあるので、異常が認められた場合には、必要に応じ適切な処置を行うこと。

注)自発報告において認められている副作用のため頻度不明。

高齢者への投与

一般的に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら投与すること(使用経験が少ない。「重要な基本的注意」、「薬物動態」の項参照)。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

1.
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。また、動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。]

2.
授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。]

小児等への投与

1.
小児に対しては、本剤を適切に吸入投与できると判断された場合にのみ投与すること。

2.
幼児へ投与する場合には、患者の状態を十分に観察しながら投与すること(使用経験が少ない)。

3.
低出生体重児、新生児又は乳児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。

4.
*予防に対して、10歳未満での20mg 1日1回、2日間吸入投与の使用経験はない。

適用上の注意

1.
本剤は口腔内への吸入投与にのみ使用すること。

2.
患者又は保護者には添付の使用説明書を渡し、空の容器によるデモンストレーションも含めて使用方法を指導すること。

薬物動態

1. 吸収

(1) 健康成人

1) 血漿中濃度
国内において健康成人男性16例に本剤(ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mg又は40mg)を単回吸入投与したときの活性代謝物ラニナミビルの血漿中濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった。1)

単回吸入投与時の活性代謝物ラニナミビルの血漿中濃度推移(成人)



(表1 参照)

2) *血漿、肺胞粘液、肺胞マクロファージ中濃度
国内において健康成人男性35例に本剤(ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mg)を単回吸入投与したときの活性代謝物ラニナミビルの血漿、肺胞粘液及び肺胞マクロファージ中濃度推移並びに薬物動態パラメータの推定値は以下のとおりであった2)

単回吸入投与時の活性代謝物ラニナミビルの血漿、肺胞粘液及び肺胞マクロファージ中濃度推移(成人)



各測定時点5例(ただし、0.25時間、2時間、3.5時間後の血漿中濃度は35例)
注) 血漿中濃度は0.25時間後で1例、168時間後で2例、240時間後で4例が定量下限未満であった。

(表2 参照)

(2) 小児
国内において、4〜12歳の小児のインフルエンザウイルス感染症患者19例にラニナミビルオクタン酸エステルとして20mg又は40mgを単回吸入投与したときの活性代謝物ラニナミビルの血漿中濃度は以下のとおりであった。

(表3 参照)

(3) 腎機能障害患者
国内においてクレアチニンクリアランス(Ccr)値により規定された腎機能低下者13例にラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与したところ、活性代謝物ラニナミビルのt1/2に変化は認めず、AUC0-infは、腎機能正常者と比較して、軽度(Ccr:50〜80mL/min)、中等度(Ccr:30〜50mL/min)及び重度(Ccr:30mL/min未満)の腎機能低下者でそれぞれ1.1倍、2.0倍、4.9倍であった3)

(4) 高齢者
国内において健康な高齢者(65歳以上)6例にラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与したところ、非高齢者(20〜45歳)と比較して、活性代謝物ラニナミビルのTmax及びt1/2に変化は認めず、Cmaxが0.5倍、AUC0-infが0.8倍であった。

2. 蛋白結合率(超遠心法)
ヒト血漿蛋白結合率は、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物では67〜70%、活性代謝物ラニナミビルでは0.4%以下であった。

3. 分布

参考(動物実験)
ラットに14C-ラニナミビルオクタン酸エステル水和物を単回経気管投与したところ、放射能は主な標的組織である気管や肺に高濃度に認められ、肺中放射能濃度は消失半減期23.2時間で推移した。放射能は中枢神経系(脳・脊髄)にはほとんど認められなかった。

4. 代謝
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物は、吸入投与後、気管及び肺において加水分解により活性代謝物ラニナミビルに変換されると推測される。
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物及びラニナミビルは、ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro 代謝試験で主要なチトクロームP450分子種(1A2、2C9、2C19、2D6及び3A4)に対して阻害を示さなかった。また、ヒト培養肝細胞にて、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物及びラニナミビルによるチトクロームP450分子種(1A2、3A4)の誘導は認められなかった。

5. 排泄
国内において健康成人男性8例に本剤(ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mg)を単回吸入投与したとき、活性代謝物ラニナミビルの投与144時間後までの累積尿中排泄率は投与量の23.1%であった。

表1 単回吸入投与時の活性代謝物ラニナミビルの薬物動態パラメータ(成人)

投与量 例数 Cmax
(ng/mL) 
Tmaxa)
(hr) 
AUC0-tz
(ng・hr/mL) 
t1/2
(hr) 
20mg 19.0±3.1 4.0(3.0〜6.0) 558.0±96.4 66.6±9.1 
40mg 38.3±9.8 4.0(3.0〜6.0) 1080±156 74.4±19.3 

mean±SD
a)中央値(最小値〜最大値)


表2 単回吸入投与時の活性代謝物ラニナミビルの薬物動態パラメータの推定値(成人)

試料 Cmax
(ng/mL) 
Tmax
(hr) 
AUClast
(ng・hr/mL) 
t1/2
(hr) 
血漿 25.45 3.5 826 45.7 
肺胞粘液 3.51×103 4.0 88.1×103 358.5 
肺胞マクロファージ 143×103 8.0 11.2×106 211.0 

表3 単回吸入投与時の活性代謝物ラニナミビルの血漿中濃度(小児)

投与量 例数 投与
1時間後 
投与
4時間後 
投与
24時間後 
投与
144時間後 
20mg 12.0±8.1 17.6±10.0 5.3±2.7 0.5±0.8 
40mg 11 21.7±7.7 32.7±10.0 9.6±3.0 2.0±1.1 

mean±SD
単位:ng/mL


臨床成績

1. 治療試験成績

(1) 成人
日本及び海外(台湾、韓国、香港)で実施されたオセルタミビルリン酸塩を対照薬とした第III相国際共同試験におけるインフルエンザ罹病時間(全てのインフルエンザ症状が「なし」又は「軽度」に改善し、それらが21.5時間以上持続するまでの時間)に対する有効性を以下に示す。無作為化された1,003例の実施国・地域別の内訳は、日本787例、台湾188例、韓国21例、香港7例であった。
主要評価項目であるインフルエンザ罹病時間(中央値)は、ラニナミビルオクタン酸エステル40mg群で73.0時間、対照薬であるオセルタミビル75mg群で73.6時間を示し、差の95%信頼区間の上限(6.9時間)は規定した非劣性限界値である18時間を下回り、1日2回5日間反復経口投与のオセルタミビルリン酸塩に対する単回吸入投与のラニナミビルオクタン酸エステル水和物の非劣性が検証された4)

(表4 参照)

(2) 小児

1) 3〜9歳における成績
国内において3〜9歳の小児を対象とした第III相臨床試験を、成人対象の臨床試験と同一の用法・用量(ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与)で、対照薬をオセルタミビルリン酸塩(オセルタミビルとして2mg/kg/回を1日2回5日間経口投与)として実施した。主要評価項目であるインフルエンザ罹病時間(咳及び鼻症状の2症状が「なし」又は「軽度」に改善し、かつ体温が37.4℃以下となって、それらが21.5時間以上持続するまでの時間)は、ラニナミビルオクタン酸エステル20mg群で56.4時間、対照薬であるオセルタミビル2mg/kg群で87.3時間であった5)

(表5 参照)

2) 10〜19歳における成績
国内において10〜19歳の未成年を対象とし、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mg又は40mgの単回吸入投与による二重盲検比較試験を実施した。主要評価項目であるインフルエンザ罹病時間(全てのインフルエンザ症状が「なし」又は「軽度」に改善し、それらが21.5時間以上持続するまでの時間)は、ラニナミビルオクタン酸エステル20mg群で87.1時間、40mg群で76.0時間(いずれも中央値)であった。中央値の差[95%信頼区間]は-11.1時間[-32.9〜13.0]であり、有意差は認められないものの、40mg群は20mg群と比較してインフルエンザ罹病時間が短かった。

(3) 慢性呼吸器疾患を基礎疾患に有する患者
国内において慢性呼吸器疾患を基礎疾患に有するインフルエンザウイルス感染症患者(20〜77歳)を対象にオセルタミビルリン酸塩を対照薬とした二重盲検比較試験を実施した。
有効性の主要評価項目であるインフルエンザ罹病時間(全てのインフルエンザ症状が「なし」又は「軽度」に改善し、それらが21.5時間以上継続するまでの時間)の中央値は、ラニナミビルオクタン酸エステル40mg群で64.7時間、オセルタミビル75mg群で59.7時間であり、同様の推移で回復した6)

2. *予防試験成績
国内においてA型又はB型インフルエンザウイルス感染症患者の同居家族又は共同生活者(10歳以上)を対象として、ラニナミビルオクタン酸エステル20mgを1日1回2日間吸入投与したときのインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果(10日間)を検討した。
主要評価項目である臨床的インフルエンザウイルス感染症の発症割合は、ラニナミビルオクタン酸エステル20mg群で3.9%(19/487)、プラセボ群で16.9%(81/478)であり、プラセボ群と比較して統計的に有意に低かった(P<0.0001)。また、プラセボ群に対する相対リスク減少率[95%信頼区間]は、77.0%(62.7〜85.8)であった。
ウイルス型・亜型別の臨床的インフルエンザウイルス感染症の発症割合は、ラニナミビルオクタン酸エステル20mg群及びプラセボ群で、A型(H3N2)ではそれぞれ3.6%(16/443)及び17.3%(75/434)、B型ではそれぞれ7.0%(3/43)及び14.0%(6/43)であった7)

(表6 参照)

表4 インフルエンザ罹病時間(成人)

投与群 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物
40mga) 
オセルタミビルリン酸塩
75mgb) 
投与方法 単回吸入 5日間反復経口(1日2回) 
被験者数(例) 334 336 
中央値(hr)
[95%信頼区間] 
73.0
[68.4〜80.8] 
73.6
[68.5〜83.3] 
中央値の差c)(hr)
[95%信頼区間] 
-0.6
[-9.9〜6.9] 
− 

a)ラニナミビルオクタン酸エステルとして
b)オセルタミビルとして
c)非劣性限界値:18時間


表5 インフルエンザ罹病時間(小児:3〜9歳)

投与群 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物
20mga) 
オセルタミビルリン酸塩
2mg/kgb) 
投与方法 単回吸入 5日間反復経口(1日2回) 
被験者数(例) 61 62 
中央値(hr)
[95%信頼区間] 
56.4
[43.7〜69.2] 
87.3
[67.9〜129.7] 
中央値の差(hr)
[95%信頼区間] 
-31.0
[-50.3〜-5.5] 
− 

a)ラニナミビルオクタン酸エステルとして
b)オセルタミビルとして


表6 臨床的インフルエンザウイルス感染症の発症割合(10日間)

投与群 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物
20mga) 
プラセボ 
被験者数(例) 487 478 
発症被験者数(例) 19 81 
発症割合(%) 3.9 16.9 
Pb) <0.0001   
相対リスク減少率c)(%)
[95%信頼区間] 
77.0
[62.7〜85.8] 
  

a) ラニナミビルオクタン酸エステルとして
b) プラセボ群を対照としたFisherの正確検定
c) 100×(1−ラニナミビルオクタン酸エステル群の発症割合/プラセボ群の発症割合)


薬効薬理

ラニナミビルオクタン酸エステル水和物はプロドラッグであり、加水分解により活性代謝物ラニナミビルに変換された後、抗ウイルス作用を示す。

(1) In vitro 抗ウイルス作用
ラニナミビルはin vitro でのA型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを低濃度(実験室株IC50:2.32〜38.8nM、臨床分離株IC50:1.29〜26.5nM)で阻害した8)。また、ラニナミビルは、オセルタミビルリン酸塩耐性株(IC50:5.62〜48.9nM)や、新型インフルエンザA型(H1N1)ウイルス(IC50:0.41nM)及び高病原性鳥インフルエンザA型(H5N1)ウイルス(IC50:0.28〜2.1nM)に対してもin vitro で抗ウイルス作用(ノイラミニダーゼ阻害活性)を示した8,9,10)

(2) In vivo 抗ウイルス作用
A型インフルエンザウイルスのマウス感染モデルでは、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の単回経鼻投与により、6.6〜660μg/kgで有意な肺中ウイルス力価の減少、21〜190μg/kgで有意な生存数の増加といった治療効果が認められた11)。また、B型インフルエンザウイルスのフェレット感染モデルで、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の単回経鼻投与(24μg/kg及び240μg/kg)は、鼻腔洗浄液中のウイルス力価を低下させた12)
また、新型インフルエンザA型(H1N1)ウイルスのマウス感染モデルにおいて、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物700μg/kgの単回経鼻投与で有意な肺中ウイルス力価の減少が認められた9)
高病原性鳥インフルエンザA型(H5N1)ウイルスのマウス感染モデルにおいても、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の単回経鼻投与は、75μg/kg以上の投与量で感染3日後の、750μg/kg以上の投与量で感染6日後までの肺中ウイルス力価を減少させた10)

(3) 作用機序
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の活性代謝物ラニナミビルは、A型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害し(IC50:1.29〜38.8nM)8)、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制する。

(4) 耐性
インフルエンザウイルス感染症に対するラニナミビルオクタン酸エステル水和物の効果を検討した国内臨床試験8試験(国際共同試験の1試験含む)で、1,917例の患者から分離したインフルエンザウイルス株において活性代謝物ラニナミビルに対する感受性が低下した株は認められなかった。

有効成分に関する理化学的知見

1. 一般名
ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(Laninamivir Octanoate Hydrate)

2. 化学名
(2R ,3R ,4S )-3-Acetamido-4-guanidino-2-[(1R ,2R )-2-hydroxy-1-methoxy-3-(octanoyloxy)propyl]-3,4-dihydro-2H -pyran-6-carboxylic acid monohydrate
(2R ,3R ,4S )-3-Acetamido-4-guanidino-2-[(1S ,2R )-3-hydroxy-1-methoxy-2-(octanoyloxy)propyl]-3,4-dihydro-2H -pyran-6-carboxylic acid monohydrate

3. 分子式
C21H36N4O8・H2O

4. 分子量
490.55

5. 構造式

6. 性状
白色の粉末である。
ジメチルスルホキシド及びメタノールに溶けやすく、エタノール(99.5)に溶けにくく、水に極めて溶けにくく、アセトニトリル及びヘキサンにほとんど溶けない。
わずかに吸湿性である。

7. 融点
約235℃(分解)

8. 分配係数
log Pow=0.0(pH7.0、オクタノール/水系)

取扱い上の注意

本剤は防湿のためアルミ包装されているので、吸入の直前にアルミ包装を開封すること。

包装

イナビル吸入粉末剤20mg 2容器(2キット)

主要文献及び文献請求先

主要文献

1)
Yoshiba S, et al.:J Bioequiv Availab. 2011;3(1):001-004

2)
*Ishizuka H, et al.:Antimicrob Agents Chemother. 2012;56(7):3873-3878

3)
Ishizuka H, et al.:J Clin Pharmacol. 2011;51(2):243-251

4)
Watanabe A, et al.:Clin Infect Dis. 2010;51(10):1167-1175

5)
Sugaya N, et al.:Antimicrob Agents Chemother. 2010;54(6):2575-2582

6)
*Watanabe A.:J Infect Chemother. 2013;19(1):89-97

7)
*Kashiwagi S, et al.:J Infect Chemother. 2013;19(4):740-749

8)
Yamashita M, et al.:Antimicrob Agents Chemother. 2009;53(1):186-192

9)
Itoh Y, et al.:Nature. 2009;460:1021-1025

10)
Kiso M, et al.:PLoS Pathog. 2010;6(2):e1000786

11)
Kubo S, et al.:Antimicrob Agents Chemother. 2010;54(3):1256-1264

12)
社内資料:フェレット感染モデルにおける抗ウイルス作用

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