アンスロビンP500注射用/アンスロビンP1500注射用


作成又は改訂年月

**2014年5月改訂(第20版)

*2012年10月改訂

日本標準商品分類番号

876343

日本標準商品分類番号等

再審査結果公表年月(最新)
2004年3月(アンスロビンP500注射用)
−(アンスロビンP1500注射用)

薬効分類名

血漿分画製剤 (乾燥濃縮人アンチトロンビンIII製剤)

承認等

販売名
アンスロビンP500注射用

販売名コード

6343424D2071

承認・許可番号

承認番号
22100AMX01056
商標名
Anthrobin P 500 for Injection

薬価基準収載年月

2009年9月

販売開始年月

1987年12月

貯法・使用期限等

貯法

30℃以下に凍結を避けて保存

有効期間

国家検定合格の日から3年間
最終有効年月日は外箱に表示

基準名

生物学的製剤基準 「乾燥濃縮人アンチトロンビンIII

規制区分

特定生物由来製品

処方せん医薬品注)

注)注意-医師等の処方せんにより使用すること

**組成

本剤はヒトの血液を原料として製剤化された乾燥濃縮人アンチトロンビンIII製剤で、1バイアル中に下記の成分を含有する凍結乾燥注射剤である。

有効成分
乾燥濃縮人アンチトロンビンIII

500国際単位
 
備考
ヒト血液由来成分
採血国:日本
採血の区分:献血

添加物
L-グルタミン酸ナトリウム

100mg

添加物
クエン酸ナトリウム水和物

35mg

添加物
塩化ナトリウム

50mg

添付溶解液:日局注射用水

10mL

本剤は製造工程でブタの腸粘膜由来成分(ヘパリン)を使用している。

**製剤の性状

本剤は、凍結乾燥製剤であり、添付の溶解液(日局注射用水)全量で溶解した場合、1mL中に人アンチトロンビンIII50国際単位を含有する無色ないし淡黄色の澄明又はわずかに白濁した液剤となる。

 pH:6.5〜8.0

 浸透圧比:約1(生理食塩液に対する比)

販売名
アンスロビンP1500注射用

販売名コード

6343424D3043

承認・許可番号

承認番号
21700AMZ00814
商標名
Anthrobin P 1500 for Injection

薬価基準収載年月

2005年12月

販売開始年月

2006年4月

貯法・使用期限等

貯法

30℃以下に凍結を避けて保存

有効期間

国家検定合格の日から3年間
最終有効年月日は外箱に表示

基準名

生物学的製剤基準 「乾燥濃縮人アンチトロンビンIII

規制区分

特定生物由来製品

処方せん医薬品注)

注)注意-医師等の処方せんにより使用すること

**組成

本剤はヒトの血液を原料として製剤化された乾燥濃縮人アンチトロンビンIII製剤で、1バイアル中に下記の成分を含有する凍結乾燥注射剤である。

有効成分
乾燥濃縮人アンチトロンビンIII

1,500国際単位
 
備考
ヒト血液由来成分
採血国:日本
採血の区分:献血

添加物
L-グルタミン酸ナトリウム

300mg

添加物
クエン酸ナトリウム水和物

105mg

添加物
塩化ナトリウム

150mg

添付溶解液:日局注射用水

30mL

本剤は製造工程でブタの腸粘膜由来成分(ヘパリン)を使用している。

**製剤の性状

本剤は、凍結乾燥製剤であり、添付の溶解液(日局注射用水)全量で溶解した場合、1mL中に人アンチトロンビンIII50国際単位を含有する無色ないし淡黄色の澄明又はわずかに白濁した液剤となる。

 pH:6.5〜8.0

 浸透圧比:約1(生理食塩液に対する比)

特殊記載項目

本剤は、貴重なヒト血液を原料として製剤化したものである。原料となった血液を採取する際には、問診、感染症関連の検査を実施するとともに、製造工程における一定の不活化・除去処理などを実施し、感染症に対する安全対策を講じているが、ヒト血液を原料としていることによる感染症伝播のリスクを完全に排除することはできないため、疾病の治療上の必要性を十分に検討の上、必要最小限の使用にとどめること。(「使用上の注意」の項参照)

禁忌

(次の患者には投与しないこと)

本剤の成分に対しショックの既往歴のある患者

原則禁忌

(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

効能又は効果

効能又は効果/用法及び用量

1. 先天性アンチトロンビンIII欠乏に基づく血栓形成傾向

効能又は効果毎の用法及び用量

本剤を添付の注射用水で溶解し、緩徐に静注もしくは点滴静注する。

本剤1日1,000〜3,000単位(又は20〜60単位/kg)を投与する。

なお、年齢、症状により適宜減量する。

1. アンチトロンビンIII低下を伴う汎発性血管内凝固症候群(DIC)

効能又は効果毎の用法及び用量

本剤を添付の注射用水で溶解し、緩徐に静注もしくは点滴静注する。

アンチトロンビンIIIが正常の70%以下に低下した場合は、通常成人に対し、ヘパリンの持続点滴静注のもとに、本剤1日1,500単位(又は30単位/kg)を投与する。

ただし、産科的、外科的DICなどで緊急処置として本剤を使用する場合は、1日1回40〜60単位/kgを投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

用法及び用量に関連する使用上の注意

1.出血検査等出血管理を十分行いつつ使用すること。

2.ヘパリンの併用により出血を助長する危険性のある場合は、本剤の単独投与を行うこと。

3.DICの場合におけるヘパリンの1日持続点滴は、通常10,000単位が適当と考えられるが、臨床症状により適宜増減すること。ただし、ヘパリンの投与は1時間あたり500単位を超えないこと。

使用上の注意

慎重投与

(次の患者には慎重に投与すること)

1. 溶血性・失血性貧血の患者[ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、発熱と急激な貧血を伴う重篤な全身症状を起こすことがある。]
2. 免疫不全患者・免疫抑制状態の患者[ヒトパルボウイルスB19の感染を起こす可能性を否定できない。感染した場合には、持続性の貧血を起こすことがある。]

重要な基本的注意

[患者への説明]

本剤の使用にあたっては疾病の治療における本剤の必要性とともに、本剤の製造に際し感染症の伝播を防止するための安全対策が講じられているが、血液を原料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを患者に対して説明し、理解を得るよう努めること。

1.
本剤の原材料となる献血者の血液については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体及び抗HTLV-I抗体陰性で、かつALT(GPT)値でスクリーニングを実施している。さらに、プールした試験血漿については、HIV、HBV、HCV、HAV及びヒトパルボウイルスB19について核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。

その後の製造工程である60℃、10時間液状加熱処理及びウイルス除去膜処理は、HIVをはじめとする各種ウイルス除去・不活化効果を有することが確認されているが、投与に際しては、次の点に十分注意すること。

血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。

2.
現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分に行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。

3.
ショック等の重篤な副作用を起こすことがあるので、使用にあたっては、経過を十分観察すること。

4.
本剤を、緊急措置以外にDICの治療に使用する場合にあたっては、患者のアンチトロンビンIII値が正常の70%以下に低下している場合においても、本剤の投与が医療上必要であると判断されたときに使用すること。

5.
本剤の使用にあたっては、少なくとも2日以上使用してその効果を判定し、使用の継続を判断すること。

相互作用

併用注意

(併用に注意すること)

薬剤名等
抗凝固剤
トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)製剤等

臨床症状・措置方法
本剤の作用が増強するおそれがある。

機序・危険因子
併用により、抗凝固作用が相加的に作用する。

副作用

延べ10,126例中、35例(0.35%)に49件の副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。(再審査終了時)

主な副作用は、胸部不快感5件(0.05%)、AST(GOT)上昇5件(0.05%)、ALT(GPT)上昇4件(0.04%)、悪寒2件(0.02%)、発熱2件(0.02%)、好酸球増多2件(0.02%)、蕁麻疹、発疹、嘔気・嘔吐、頭痛各1件(0.01%)であった。

重大な副作用

ショック、アナフィラキシー(頻度不明)ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、呼吸困難、喘鳴、胸内苦悶、血圧低下、チアノーゼ等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

その他の副作用

過敏症注)
0.1%未満 
発疹、蕁麻疹等

肝臓
0.1%未満 
AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇等

消化器
0.1%未満 
嘔気・嘔吐

その他
0.1%未満 
悪寒、発熱、頭痛、胸部不快感、好酸球増多

注)このような症状があらわれた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

高齢者への投与

一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。本剤の投与によりヒトパルボウイルスB19の感染の可能性を否定できない。感染した場合には胎児への障害(流産、胎児水腫、胎児死亡)が起こる可能性がある。]

小児等への投与

低出生体重児、新生児に対する安全性は確立していない。

適用上の注意

1. 調製時:

(1)
他剤との混合注射は避けることが望ましい。

(2)
本剤は、溶解後ただちに使用すること。

(3)
一部を使用した残液は、細菌汚染のおそれがあるので使用しないこと。

2. 投与時:

(1)
溶解時に著しい沈殿の認められるものは投与しないこと。

(2)
溶解した液をシリコンオイルが塗布されているシリンジで採取した場合、浮遊物が発生することがある。投与前に薬液中に浮遊物がないか目視で確認すること。浮遊物が認められた場合には投与しないこと。

薬物動態

先天性アンチトロンビンIII欠乏症患者11例に本剤2,000〜6,000単位を1時間かけて点滴静脈内投与(単回投与)したときの血漿中アンチトロンビンIII動態を検討した1)

薬物動態の表

半減期T1/2(n=7) 回収率注1) 上昇率注2) 
61.1±23.0時間 95.4±33.3% 1.01±0.30%/単位/kg 

注1)投与後のアンチトロンビンIII上昇期待値に対する上昇実測値の百分率
注2)投与後の最高アンチトロンビンIII活性の得られた時点で求めた上昇率


臨床成績

1. 先天性アンチトロンビンIII欠乏症
血栓症を併発した先天性アンチトロンビンIII欠乏患者4例に計6回本剤を70.5〜74.6単位/kg投与したとき、全例有効以上(1例1回の判定不能を除く)であった1)

2. DIC
国内の一般臨床試験、比較臨床試験で本剤を投与されたDIC患者146例中、評価可能な123例に対する有効以上の有効率は69.1%(85/123例)であった。また本剤単独投与群の有効率は74.0%(57/77例)、他剤との併用群は60.9%(28/46例)であった2〜7)

 

薬効薬理

1. セリンプロテアーゼ阻害作用(in vitro)
アンチトロンビンIIIは、分子量約59,000の一本鎖糖タンパク8)であり、血液凝固系のトロンビンをはじめとする種々のセリンプロテアーゼ(トロンビン9)、第Xa因子10〜13)、第IXa因子13,14)、第XIa因子15)、第XIIa因子16)、第VIIa因子17)、プラスミン18)及びカリクレイン19))と1対1のモル比で複合体を形成することにより、その活性を阻害する。また、アンチトロンビンIIIはヘパリンと複合体を形成することにより、その作用が即時的となる13,14,17)

2. DICモデルに対する効果
ウサギの急性DIC20)、ラットの急性DIC21)さらに妊娠ウサギの急性DIC22)に対して、本剤を投与したところ、DICによって生じていた血小板数、フィブリノゲン量、PT、APTTの変化が改善され、本剤がDICに対して有効であることが示された。

取扱い上の注意

本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を投与又は処方した場合は、医薬品名(販売名)、その製造番号(ロット番号)、投与又は処方した日、投与又は処方を受けた患者の氏名、住所等を記録し、使用日から少なくとも20年間保存すること。

**包装

アンスロビンP500注射用 500国際単位 1バイアル(日局注射用水 10mL×1バイアル、溶解移注針添付)

アンスロビンP1500注射用 1,500国際単位 1バイアル(日局注射用水 30mL×1バイアル、溶解移注針、通気針添付)

主要文献及び文献請求先

主要文献

1)
中川雅夫 他:診療と新薬,22(9),2139,1985

2)
真木正博 他:産婦人科治療,52(5),611,1986

3)
真木正博 他:産婦人科治療,53(4),471,1986

4)
真木正博 他:診療と新薬,22(9),2165,1985

5)
小林宏行 他:感染症学雑誌,59(11),1121,1985

6)
杉島忠志 他:診療と新薬,22(9),2155,1985

7)
水口明洋 他:診療と新薬,22(9),2147,1985

8)
Koide,T.:J.Biochem.,86(6),1841,1979

9)
Rosenberg,R.D.:New Engl.J.Med.,292(3),146,1975

10)
Biggs,R., et al.:Brit.J.Haematol.,19,283,1970

11)
Seegers,W.H., et al.:Can.J.Biochem.,42,359,1964

12)
Yin,E.T., et al.:J.Biol.Chem., 246(11),3703,1971

13)
Φsterud,B., et al.:Thromb.Haemostas.(Stuttg.),35,295,1976

14)
Rosenberg,J.S., et al.:J.Biol.Chem., 250(23),8883,1975

15)
Damus,P.S., et al.:Nature, 246,355,1973

16)
Stead,N., et al.:J.Biol.Chem.,251(21),6481,1976

17)
Godal,H.C., et al.:Thromb.Res., 5(6),773,1974

18)
Highsmith,R.F., et al.:J.Biol.Chem.,249(14),4335,1974

19)
Vennerod,A.M., et al.:Thromb.Res.,9(5),457,1976

20)
磯部淳一 他:臨牀と研究,62(11),3573,1985

21)
杉島忠志 他:臨牀と研究,62(11),3688,1985

22)
松本 忍:応用薬理,30(4),589,1985

23)
青木延雄 他:厚生省特定疾患 血液凝固異常症調査研究班 昭和62年度研究報告書,37,1988

24)
真木正博 他:産婦人科治療,50(1),119,1985

25)
上林純一 他:厚生省特定疾患 汎発性血管内血液凝固症調査研究班 昭和55年度業績報告「汎発性血管内凝固症IV」,61,1981

26)
Shirahata,A., et al.:Disseminated Intravascular Coagulation(Abe,T., et al. ed.), Tokyo;Univ.of Tokyo Press, 277,1983

27)
大治太郎 他:日本新生児学会雑誌,23(3),758,1987

文献請求先

CSLベーリング株式会社くすり相談窓口

*〒135-0062 東京都江東区東雲一丁目7番12号

フリーダイヤル0120-534-587 FAX(03)3534-5861

製造販売業者等の氏名又は名称及び住所

製造販売
一般財団法人 化学及血清療法研究所

熊本市北区大窪一丁目6番1号

販売
CSLベーリング株式会社

*〒135-0062 東京都江東区東雲一丁目7番12号

その他の説明(付属機器の取り扱い等)

DIC診断基準

DICの診断に当たっては、下記のような診断基準があるので参考とされたい。

・厚生省DIC研究班の診断基準(青木 他)23) 表1

・産婦人科DICの診断基準(真木 他)24) 表2

・消化器外科における重症感染症のDICの診断基準(上林 他)25) 表3

・新生児DICの診断基準(白幡 他)26,27) 表4

 

表1 厚生省DIC研究班の診断基準23)

表2 産婦人科DICの診断基準24)

※基礎疾患スコアは、各基礎疾患項目の中から1項目のみ選択する。

DIC判定:DIC診断基準により総得点が8点以上のもの。

 

表3 消化器外科における重症感染症のDICの診断基準25)

この3つを満足するものをDIC、2つを満足するものをDIC準備状態と診断する。

 

表4 新生児DICの診断基準26,27)

1,2.必須項目

3.3点DIC疑診 4点以上確診